電子申請ができる労務管理システムとは?比較のポイントと注意点を解説

電子申請ができる労務管理システムとは?比較のポイントと注意点を解説

2020年4月から、大企業を対象に社会保険に関する届出の電子申請が義務化されました。2021年5月時点では大企業のみが対象となっていますが、今後この流れは加速し、やがては中小企業も電子申請義務化の対象に含まれる可能性が高いといえるでしょう。そのため、いまから電子申請を見据えた労務管理システムの導入が不可欠です。

今回の記事では、電子申請に対応した労務管理システムを選ぶ際のポイントや注意点も合わせて解説します。

労務管理システムとは

労務管理システムとは、その名のとおり労務管理を効率化しシステム上で管理するものです。労務管理の業務は、労働時間の管理や給与計算、福利厚生に関するものまで幅広く、一般的に人事部や総務部などが中心となって行います。

現在、多くの企業では深刻な人手不足に陥っており、労務管理をはじめとしたバックオフィス業務の効率化が求められています。また、DXの推進も叫ばれるようになり、あらゆる業務をシステム化し、限られた人材を定型的な業務から創造性が求められる業務へ転換する動きもあります。そのための第一歩として、労務管理システムの導入を検討する企業が増えているのです。

労務管理システム導入のメリットとは?

労務管理システムを導入すると、企業にとってどのようなメリットがあるのでしょうか。今回は3つのポイントに分けて解説します。

書類作成・提出など手続き全体がスピードアップする

従来の労務管理では、例えば社会保険に関する申請を行う場合、所定のフォーマットに沿って書類を作成し、それを社会保険事務所や労働基準監督署などに提出する必要がありました。

しかし、複数の書類を作成する場合、従業員の氏名や生年月日、住所など、同じ情報を重複して入力しなければならないことも多いもの。労務管理システムを活用すれば、複数の書類に社員情報を一括で登録でき、書類を作成する担当者の負担を大幅に軽減できます。

また、役所への申請を電子化する「e-Gov」対応の労務管理システムを導入すれば、システムで申請書類の作成が可能になり、書類の印刷や郵送の手間が省けるため、システムへの入力から申請までを短時間で済ませることも可能です。

確認作業の工数を削減できる

役所への申請書類を作成する場合、例えば社員情報システムから社員情報を拾い、勤怠管理システムから該当する社員の情報を検索しデータを入力するといった作業を行っているケースもあります。このような手間がかかるのは、社員情報システムや勤怠管理システムなど、複数のシステムが独立していて連携できていないことが大きな要因として考えられるためです。

労務管理システムの中には、既存のシステムと連携可能なものも多く、システム間のデータ照会や確認作業を自動化できます。

書類保管・管理の業務のコストを削減できる

通常、役所へ申請する書類は企業側においても一定期間の保管義務があります。例えば、健康保険や厚生年金に関する書類は2年間、労災保険に関する書類は3年間の保存期間が定められています。

社員数が少ないベンチャー企業やスタートアップ企業であれば、書類の管理もそれほど難しくはありませんが、社員数が増えれば増えるほど管理する情報も増えるため、管理そのものが煩雑化します。また、書類を保管しておくためのスペースも確保しなければなりません。

しかし、労務管理システムを導入すれば、データとして申請内容を保存できるため、書類管理の人員や物理的な保管スペースを確保する必要がありません。

労務管理システム導入の注意点

電子決裁システム導入の注意点

労務管理システムを導入する場合、いくつか注意しておくべきポイントはありますが、中でも重要なのがシステムの操作性です。操作性の悪いシステムだと、例えば以下のような問題が発生することも考えられます。

  • どこが入力項目なのかが分かりづらい
  • 次の画面に進むボタンが分かりづらい
  • PCでは見やすいものの、スマートフォンやタブレット端末の画面に最適化されていない

上記のような問い合わせが、人事や総務の担当者宛てに多くの従業員から殺到する可能性もあり、通常業務に支障をきたす場合もあるのです。また、せっかく労務管理システムを導入したにもかかわらず、システムの利用率が上がらず費用対効果が見込めないケースも考えられるでしょう。

業務効率化を実現するはずの労務管理システムが通常業務の支障にならないようにするためにも、事前UIやUXなど操作性を確認し、誰にとっても使いやすいシステムを選ぶことが重要です。

労務管理システムの比較ポイント

労務管理システムの基本的な選び方として操作性が重要であることは分かりましたが、複数のシステムを比較する場合において、ほかにどのようなポイントを意識すれば良いのでしょうか。今回は特に重要な3つのポイントについて解説します。

労務管理システムの比較ポイント

e-Gov対応などほかのシステムとの連携

労務管理システムの最大のメリットは、書類作成や申請にかかる工数を削減できることです。しかし、そのためにはほかのシステムとの連携やe-Govへ対応していることが大前提となります。システム間連携を強みとしている労務管理システムは多いですが、必ずしもすべてのシステムが連携できるとは限りません。

現在導入している勤怠管理や社員情報システムと連携できるのか、システムごとに連携できるサービスは異なるため、導入前に確認しておくことは必須といえるでしょう。

対応可能な業務・機能の範囲

労務管理システムには、社会保険関連の書類作成および申請機能以外にも、勤怠管理や給与計算システムなどが統合されたものもあります。また、法改正のタイミングで自動的にシステムを更新するものや、電話やチャット、メールによるサポートが充実したシステムも提供されています。

例えば、労務管理の担当者数が少なく、リソース不足による業務の遅れがあるとします。この場合、人員を追加することが有効な施策として考えられますが、そもそも使用している勤怠管理システムや給与計算システム同士の連携がうまくいかず、確認や調整に時間がかかっていることがリソース不足の原因かもしれません。

自社が求める機能は何か、対応すべき業務範囲なども検討しながら、要件を満たす労務管理システムを比較・選定してみましょう。

予算に見合うコストパフォーマンス

労務管理システムの多くは、従来、自社にサーバーを設置し管理するオンプレミス型のシステムが主流でしたが、近年ではクラウド化が進み、初期導入・運用コストが低廉化しています。中には初期コストが無料で、ユーザー数に応じて毎月の基本料金のみで維持できるプランも存在します。

もちろん、コストの安さ以外にも機能や使い勝手の良さなど選ぶポイントは多数ありますが、予算との兼ね合いも検討しながらコストパフォーマンスの良い労務管理システムを選定しましょう。

まとめ

大企業のみが対象となっている電子申請の義務化ですが、今後中小企業も含めて対象が拡大していくことが予想されます。そのためにも、いまから労務管理システムの導入を検討しておくことが重要といえるでしょう。

労務管理システムやワークフローシステムの導入は、単に法律で規定された義務化に備えるだけでなく、バックオフィス業務の工数を削減し、ヒューマンエラーも防ぐ役割を果たします。ぜひこの機会に導入をご検討ください。